NASのススメ

NASのススメ

Intro

AWS, Azure, GCPなどのクラウドサービスが普及しているが、大容量データを扱う場合、未だに自宅に設置するNASが有用である。

この記事は2023年10月に書かれた。最新の情報とは必ずしも一致しないので注意。

TL; DR

  • NAS(ネットワークアタッチトストレージ)は大容量データを扱うために自宅に設置するサーバーであり、クラウドサービスとの比較も行われる。
  • NASの特徴は、大容量のストレージ、安全なデータ保存(RAID)、差分バックアップ、常時アクセス、Webサーバー機能、DNSサービス、CUIの利用などがある。
  • NASは自宅でのデータの安全性と容量確保に役立ち、クラウドストレージよりも経済的である。
  • ただし、最新の情報は確認が必要であり、HDDの購入やセキュリティにも注意が必要である。

NASとは?

自宅などに設置する低予算・低電力サーバー (常時稼働し続けるコンピューター)のこと
下記で多用する「NASの多く」とは「Synology, QNAP, ASUSTORのNASの多く」を指す。

NASの特徴

大容量

NASのStorageにはHDDが用いられるが、近年は特に容量あたりの価格が安い。
8TBで1万円程度で買えることも。

中古HDDの例

Warning

後述するRAID (重複保存)を組む場合、HDDは2本必要で、つまりHDD購入費用も2倍になることに注意せよ。

Info

HDDは比較的寿命が長いので、
示される状態を見ながら、積極的に中古で購入しよう。
新品の半額程度に抑えられる。

安全 (RAID)

NASの多くの商品ではRAID (重複保存)を設定することができる。
たとえば、2TBのHDDを2本設置した場合

RAID重複度容量安全性その他
0なし3.6TBなし少し高速
111.8TB1本壊れても安全

NASに何を求めるかにもよるが、せっかくならRAID1以上を組んだほうがいいだろう。

RAID0

RAID1

大量の動画や大容量ファイルなど、消したくないけど常にPCに置いておくのは気が引けるファイルをNASに置いておくと、
PCの容量確保とデータの安全性確保の二重の意味でうれしい。
Cloudで雑な大容量データ保管庫を用意するのは、なかなかにお金がかかる。

それに、最近ではCloudに置いているデータに対しての自動判定で、アカウントがBANになることもある。子供の頃の写真や動画をアップロードするのは危険だ。(Google Account BANはまじでシャレにならない。本当に)

Backup

昔に行くほどまばらな頻度になるように、いい感じに差分Backupを保存してくれる。

常時アクセス

NASは常時稼働していて、ネットにつながっているので、自分専用の大容量Cloudとして扱うこともできる。

ExplorerからNASにアクセス

NASでSMB(Samba)機能を有効にすれば、
Windowsのエクスプローラーのネットワークからアクセスできる
(PC内のフォルダのようにクイックアクセスに登録もできる。)
スマホからも専用アプリ以外でも、Readdle Documentsのようなエクスプローラー系アプリから利用可能

Webサーバー

URL経由でWebページやデータを公開することも可能。
その際はWordPressなど有名なツールの多くを利用できる
(MySQL, phpなども対応)

DNS

自宅ネットワークを外部からアクセスする際、生のipアドレス (123.45.678.90など)のままでは味気ないし、このアドレスはたまに変更される。
とはいえipを固定するのはそこそこお金がかかるので、host名(hogehoge.comなど)とipアドレスを定期的に紐づけるサービスがある。
これがDNSと呼ばれるもので、たとえば自宅で開いているマイクラサーバーに外部からアクセスする際、ipの欄にhogehoge.comと入力してもらえれば、123.45.678.90に飛ばしてもらえるようになる。

このDNSサービス自体は、NASなしでも無料で利用できるのだが、使い勝手が悪い場合も多い。NASに任せられるなら、とても楽である。

CUI

NASの多くはSSHなどの端末アクセスが可能。
NASはLinuxに似た専用軽量OSのことが多いので、なんでもできるわけではない。それでもbashの基本的なコマンドはサポートされていることが多いので、画一的なファイル操作などには大変便利。

App Center

以下のように、NASの多くではApp Centerを通して多種多様な機能を追加できる。それらはGUI画面から操作できるものであったり、CUI側に恩恵があるものであったり、裏側で他の機能を支えるものであったりする。

App Centerのアプリケーションの例1
App Centerのアプリケーションの例2

常時稼働するタイプが多すぎると、動作が重くなることがあるかもしれないが、想像よりははるかに安定している。

Dockerに対応していると、簡単にできることがぐっと増える

スマホアプリ

NAS運営が発行する、NASの機能と連動したスマホアプリは、非常に重要である。これを個人で開発するのは不可能または非常に困難だからだ。お金では解決できない

NASの簡易管理や、Google Photos的なもの、ファイルエクスプローラーや、音楽や動画などのメディア閲覧などなどがある。

なお、メディア閲覧やファイルエクスプローラー自体はSMB機能を有効にすれば、一般的なアプリで問題なく代用できるので安心してほしい。

メディアストリーミング

音楽や動画、(自炊)電子書籍は蓄積すればするほど大容量になる。
サブスクの存在もあり、最近はそれほど気にする必要はないが、それでも増えることはあれ減ることはない。

しかし、それらもNASに保存しておけば、NAS公式アプリやVLC、その他アプリを通して、PC、スマホ、スマートテレビ、Fire TVなどさまざまな端末から、(ダウンロード時間を挟むことなく)ストリーミングで楽しめる

常時起動・定期起動スクリプト実行 (botなど)

NASは常時稼働しているコンピューターなので、Discord Botのような常時稼働サービスや、Splatoon戦績保存のような定期起動スクリプト、Minecraft Serverなどを自由に設置できる

もちろん、NASへの負担は考える必要はあるが、少なくともメモリ500MBのds220jでもDiscord Botは問題なく稼働した。
Minecraft ServerはEntry Modelでは厳しいかな。

予算

NAS本体

NAS本体の値段は、現実的な範囲でも、2万円弱から10万円以上まで幅広く存在する。では、何がその値段を決定しているのだろう?

Info

ところで、NASは中古購入がおすすめだ。
もともと高耐久品なことや、
購入者が飽きたパターン、
新機種と買い替えるパターンなど、期待できる中古出品パターンが多い。
とはいえ、それはみんな考えることのようで、
人気機種のNASは中古で売られてもすぐに売れてしまう……。

HDD搭載本数

さまざまなベイ数のNAS

1, 2, 4, 6, …

この影響は一番大きい。
2本増えるだけで、値段が数万円変わってくる。

搭載本数が増えると、より複雑なRAIDを組むことができるようになったり、HDDの容量がそろっている必要がなくなったりする。

(2TB, 4TB, 1TB, 1TBで4TB RAID 1のようなRAIDを組んだり)

とはいえ、入門編としては2本搭載型が一番いいだろう

基盤, CPU, メモリ

この3要素は紐づいていることが多く、実質部品交換が不可能な場合も。逆に、交換で性能アップできる場合はASUSTORのAS5202Tのメモリ交換のように、そのことを宣伝している。

このNASスペックによってNASで処理できる内容が決まってくる。
NASでやりたいことが決まってるなら、そこを基準に考えるといいだろう。

Info

Synologyのメモリが500MBのNASでは、ssh接続はできるのにVSCodeでのssh接続はできなかった。低スペックでの快適な動作のため、必要な機能が削られたためだろうか?

HDD (3.5インチ)

NASのHDDは仕様上、3.5インチが望ましい
(NASのねじ穴が3.5インチ用なので、アダプタを挟まないなら、3.5インチのほうが安定する。)
そもそも、2TB以上になるとほぼ3.5インチしかないが。

状態がいい中古品を買うとして、値段の目安は以下の通り。
稼働時間以上に電源投入回数に注目。
なお、状態が「良好」でないHDDはそのうち壊れるのでダメ。

容量価格
1TBx12000円
2TBx13500円
4TBx17000円
8TBx111000円

HDDの中にはServer向けの高耐久ブランド(Western Digital REDなど)があるが、どうせ中古で購入するのでそんなに気にしなくてよい。
というのも、HDDが2本同時に壊れる確率は相当低い。
唯一気にかけるべき点は、HDDが1本壊れたら、迅速に追加の1本を購入することだ。

Info

一般的なDesktop PC向け需要との兼ね合いか、2TBと4TBで値段が大きく変わる

Info

NASはStorageへの書き込み量の多さと求められる容量から、HDD一択と言われていたが、
近年では、SSDの低価格化(2TBで1万円弱)・長寿命化(150TBWなど)に伴い、NASをSSDで構成するプランも存在する。
留意すべき点としては、外部とのデータのやり取りの上では、ネットワークアダプタが律速段階になってしまうことだ。
とはいえ、NAS内部の処理も多いので、そこが高速化されるメリットはあまりある。

NAS購入プラン

HDDは2TBx2を中古で購入するのがいいだろう。
(1TBのほうが安いが、案外すぐ埋まってしまう)

2TBx2で新古品6600円から(ヤフオク)。
フリマアプリのクーポンと組み合わせられるとなおよい。
NAS本体とHDDセットの中古があると、一番よい。

HDDは秋葉原の実店舗の土日午前によくセールをやってるらしいので、そこもねらい目?(そこで8TBが1万円弱なこともあるらしい)

Entry: DS223j (Synology)

DS223j: 26360(新品)、売り切れ(中古)

メモリは「DDR4 1GB」
Docker対応。
Amazon

DS223j

Entry: AS1102T (ASUSTOR)

AS1102T: 23018(新品), 17800(中古、ねらい目)

メモリは「1GB DDR4(増設不可)」
Docker動作するらしい。
このページで紹介しているASUSTORのLAN portは、すべて「2.5GbE」
(2.5GbE対応のLANハブやPC側の変換器が高いのだが)
Amazon

AS1102T

Middle: AS5202T (ASUSTOR)

AS5202T: 38704(新品)、売り切れ(中古)

メモリは「2GB DDR4x2(4GBx2まで増設可能)」
Docker快適に動作。
Amazon

AS5202T

なお、増設用のメモリ「4GB DDR4x2」は中古で2000円前後だった

メルカリの検索結果

Middle: AS5402T (ASUSTOR)

AS5402T: 59900(新品)、売り切れ(中古)

AS5202Tの後継機。

AS5402T

プランまとめ

NASHDDその他合計
Entry向けSynology223j: 26360(新品)2TBx2 660033000
Asustor1102T: 17800(中古、ねらい目)2TBx2 660024000
Asustor1102T: 23018(新品)2TBx2 660030000
Middle向けAsustor5202T: 38704(新品)2TBx2 6600メモリ4GB DDR4x2 1800(中古)47000

まとめ

NASは大容量データを扱うために自宅に設置するサーバーであり、クラウドサービスとの比較も行われる。
NASの特徴は、大容量のストレージ、安全なデータ保存(RAID)、差分バックアップ、常時アクセス、Webサーバー機能、DNSサービス、CUIの利用などがある。
NASは自宅でのデータの安全性と容量確保に役立ち、クラウドストレージよりも経済的である。
ただし、最新の情報は確認が必要であり、HDDの購入やセキュリティにも注意が必要である。

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